大きな自然に潜む、小さな不思議。SANU Regenerative Club vol.3「Biome Quest」イベントレポート

 

「リジェネラティブ」とは、サステナブルを超え、より良い環境を生み出すこと。その思想を体現する方をゲストに招き、知恵と視点を学ぶプログラムSANU Regenerative Club。

第三弾イベントとなる「Biome Quest|大きな自然に潜む、小さな不思議」では、「生物多様性の保全を社会の当然に」を掲げる株式会社バイオームの杉山さんを迎えました。

那須2ndの森でいきもの探しをした参加者からは、「人生が変わった」との声が。リアルな気づきと学びを、レポート形式でお届けします。


開催日時:2025年9月20日
開催場所:SANU 2nd Home 那須2nd
ナビゲーター:杉山 実優(株式会社バイオーム)

 
 
 
 

目次

1. 今後数十年以内に100万種が絶滅する?
2. いきもののリアルタイムデータが生物多様性を守る鍵になる
3. いきもの探しで「人生が変わった」
4. 杉山さんにとってリジェネラティブとは?

 
 

今後数十年以内に100万種が絶滅する?

今回の会場は、SANU 2nd Home 那須2nd。この拠点ができる前に行われた専門家による調査では、70種類以上の動植物が確認された豊かな森です。今回のイベントでは、いきもの探しを楽しみながら開発後の現状を記録していきます。

チェックインをすませた13名の参加者が集まり、ナビゲーターの杉山さんによる講義からイベントがはじまりました。

「今世界ではたくさんの動植物が絶滅の危機にあり、今後数十年以内に100万種が絶滅する可能性があると言われています。今、日本に生息していると分かっているいきものが約9万種なので、その10倍以上というものすごい数です。さらに一部の研究では、何の対策も取らなかった場合、100年以内に地球上の50%以上の種が絶滅するとの研究もあります」

「このまま進むと、人が今のようには暮らせない未来が近付いてきます。例えば世界の食用作物の約75%が昆虫などによる受粉に頼っていたり、医薬品の約50%は自然由来の有効成分を使用しているなど、自然の恵みがあって私たちは今の生活を送ることができているのです」

 
 
 

いきもののリアルタイムデータが生物多様性を守る鍵になる

「いきものはそれぞれに個性があり、互いにつながり合っています。その個性の多様さ、つながりの多様さから生まれるのが生物多様性です。では、いま急速に失われつつある生物多様性を守るには、どうすればよいのでしょうか」

「そこで鍵となるのが、どこに、どんないきものがいるのかを把握できるリアルタイムデータです。このデータがあることで、生物多様性を守るためにどこでどんな活動を行うのが効果的かを判断できます」

「しかし、専門家総出で日本全国すべての地点で毎日生物相の調査を続けるのは現実的ではありません。そこで、株式会社バイオームは市民が参加し、いきもの探しと記録をゲーム感覚で楽しめるアプリ、Biomeを開発しました。6年前のリリース以来、100万ダウンロードを突破し、全国から累計1000万件を超えるいきものの情報が投稿されています」

「それでは早速この森にいるいきものを、みんなで探して記録していきましょう」


Biomeアプリの使い方を習った子どもたちは、勢いよくキャビンから飛び出していきました。

 
 
 
 

いきもの探しで「人生が変わった」

「このカエル、でっけー!!」

少し前に会ったばかりのお友達と協力して、なんとかカゴに入れたのはとても大きなカエル。自ずと参加者が集まり、歓声が上がります。

「みて!いまカマキリがとんだ!」

子どもたちだけでなく、大人ものめり込むうちにあっという間に1時間が経過。満足感に包まれながら、キャビンに戻って振り返ります。

 
 

「はじめてカマキリがとぶのをみて、かっこよかった!」

「虫は元々好きでした。でも、雑草としか思っていなかった植物にこんなにたくさんの種類があることを知って、人生が変わりました」

「生物多様性の保全と聞くと遠い問題に感じてしまうけど、楽しみながら記録することが保全につながると聞いて、これからもやってみようと思いました」

杉山さんにとってリジェネラティブとは?

「具体的な保全活動が重要なのは言わずもがなですが、実際に取り組むとなると一般の方には少しハードルが高い側面もあるのではと感じることもあります」

「バイオームは、ゲーム感覚で生物の分布データを収集することができます。生物多様性保全に寄与する行動のハードルを下げて、まずは関わる人を増やしていくことで、結果的にリジェネラティブの促進に繋がればと思っています」

今回のイベントでは参加者がいきもの探しを楽しみつつ、現状の森の様子を確認する貴重なデータが集まりました。今後もモニタリングを継続して、那須2ndができる前と後の環境を比較しながら、いきものにとってより良い環境をつくるための維持管理に活かしていく予定です。

 

「SANUが広がるほど、自然が豊かになる。」

まずは自然をよく観察して、みずみずしい発見を楽しむことから。

そして過去に学び、未来を想い、前向きに行動する輪を少しずつ広げていく。

SANU Regenerative Clubの活動は、まだまだ始まったばかり。これからも、続いていきます。

===

これまで開催したイベントのレポートは、以下よりご覧いただけます。

vol.1 Trail Maintenance|火を囲み、山を歩き、道を繋ぐ

vol.2 Soil Cycle|暮らしに命を宿らせる

また今回ご協力をいただいた、株式会社バイオームの活動についてはこちらをご覧ください。

また来年、自然の中でみなさんとお会いできる日を楽しみにしています。

 
 

Text : Sumito Ueno(SANU)
Photo,Video : Yoichi Onoda(Seehoot)

次へ
次へ

暮らしに命を宿らせる。SANU Regenerative Club vol.2 「Soil Cycle」イベントレポート